QはPと出会ったその夜、早速グラデーションを再現してみた。
しかし、何か違う。
「もっと…。」
以前は、グラデーションを見ると心にグッとくるものがあった。
まるで夜の海のを照らす、柔らかな月のような色になれた。
しかし、今はなんといえばいいのか。
「無色透明」
Qは思わず呟く。
飼い猫モコがにゃーと鳴いた。
同時にmokoも鳴いたような気がした。
「やっぱり…。」
Qはそう呟きながら、その日は深い眠りについた。
Qは今まで、心を色でしか表現できなかった。
しかし、今は違う。
ザワザワしたり、ぽかぽかしたり、キラキラしたり…。
今までと違う、人らしい感情を持つようになっていた。
黙り込むQを見て、Pが心配そうにのぞいている。
「Qさん?」
Qはハッと我にかえる。
するとPはくすくす笑いながら
「そんな顔初めてみました!素敵です!」
とキラキラした目で言った。
ここ数日、QはPを不思議そうに眺めていた。
Qは今まで、自分自身に興味を持つ人を見たことがなかった。
誤解を招かないよう説明すると、Qの才能には誰もが一目置いている。
Qの研究、Qの容姿、Qの頭脳にはみんな興味津々だ。
しかし、Qの表情や、Qの性格、Qらしさというものに興味を持ってくる人は滅多にいない。
両親でさえも、興味がない。
「変な子ね。」
Qがそう呟くと、Pは「はい!」と笑顔で答える。
それを見て、Qは笑った。
Qの笑顔を見て、Pはまた褒めちぎる。
媚びているわけではなく、本心なのだと伝わる。
「やっと親友が言ってた意味がわかったわ。」
Qは月明かりに照らされたような、穏やかな気持ちになれた。
そして、気づいた。
グラデーションが見れなくなったのではない。
グラデーションはいつも同じだった。
いつも綺麗だった。
でもグラデーションより、心動かされ、そして心おだやかになれるものに、少しずつ出会っていたのだ。
Qは自分の心が、やっと少し見えた気がした。
「このまま朝まで行くわよ!完成しそうなの。」
Qがそういうと
「はい!もちろん!」
とPが満面の笑みで言った。
側から見たら、研究室に篭りきりの変人だろうが、Qは人生で1番キラキラしていると感じた。
それはPも同じ気持ちだろう。
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