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【創作ストーリー】天才のグラデーション第6話〜マウントはうざいに尽きる〜

「あ〜暑い」

Qは研究室でスイカバーを食べながらだらけていた。

蝉の声が、ずっと耳から離れない。

必死なのだから、当然だろう。

余裕のないものの声は、常に頭や心に響くものだ。

蝉の声を聞いていると、懐かしすぎる忌まわしい記憶が甦った。

「ああ〜またブルーになってきた」

あれは、この研究室にQが来ると決まった日。

Qが22歳の時だ。

その前にこの研究室を使っていた人は、仕事ができないコネ研究者で

研究費を浪費し、半ば研究室を追い出される形で出ていった。

Qがここに自分の資料を運びにきた日、偶然そいつと会ってしまった。

カスにはカスが集まる。

そのため、そいつはカスと一緒にQの悪口を囁いていた。

「あんな冴えない奴が次に入るなんて…僕の方が優れているのに」

「あいつがここに来なければ僕はもっといられたんだ」

「僕がいるからこの大学は今までもったんだ」

そんな嘘ばかり言っていた。

お取り巻きは「その通りです!」などと、もちろん嘘ばっかりついている。

Qは心の中で呟く。

“そんなことで自己顕示欲を満たすなんて、愚者のすることだ”

“そんなことも分からないなんて、間違いなくアホだ”

Qはもちろん顔もみず、振り向きもしなかった。

それが気に食わなかったようで、そいつは話しかけてきた。

「僕はすごいんだぞ!」

Qはもちろん無視した。

無視していると蝉よりも必死で鳴いていたが、

Qはイヤホンのノイズキャンセリングを最強にしていたので、ほぼ聞こえていなかった。

無視し続けていると、いつの間にかそいつは去っていった。

「ああ〜ブルーだ」

スイカバーはいつの間にか、ただの棒になっていた。

Qは気分を変えようと、大学内のカフェに行った。

今は夏休みで学生もいない。

約1ヶ月間だけの癒しスポットだ。

静かにカフェオレを飲んでいると、カフェの前の花壇にひまわりが咲いていた。

大きなものも、小さなものも,

一生懸命に太陽の光を浴びて

ぐんぐん伸びている。

「暑くなって、夏になってよかったね」

「太陽の方向を向いて、しっかり咲いて、ちゃんとひまわりになるんだよ」

Qは目の前の花に話しかける。

「人間って本当にめんどくさい」

カフェオレを飲み終わり、Qはひまわりに近づく。

目の前に広がる黄色。

ジリジリと照らしつける日光。

眩しくて直視できないほどの美しい黄色。

Qの心にはなかなか灯らない黄色。

「素敵なんだけど…何かが足りない」

心が震えなかった。

「絶対あいつを思い出したからだ…くそー」

Qは諦めて研究室に帰る。

そして、1人で研究に没頭し始めた。

ほかを忘れ、自分の心の色だけをみるために。

つづく

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