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【創作ストーリー】天才のグラデーション第9話〜恐怖とは何か〜

天才のグラデーション

QとPは、来る日も来る日も研究に没頭した。

研究室に週2回は泊まり込み、女子力とは皆無の生活を送っていた。

(しかし、言わずもがな2人とも美少女なので、ポテンシャルというのはすごいものだ。)

PはQの様子を見ながら、素材や部品を用意してくれる。

まさに阿吽の呼吸が2人の間には流れる。

まるで、数学の問題でよく見る点Pと点Qのように、連動して動いてるようだった。

Qは、Pとの研究に居心地の良さを感じていた。

この状態がいつまでも続くなら、Qは永遠に研究できそうな気さえしていた…。

そしてQは初めて抱く感情を手にする。

「もしPがいなくなったらどうしようか?」

「私は今までのように研究できるのだろうか?」

Qはそんなことを考える自分に、真っ青になる。

ずっと一人でやってきたQ。

子供から大人になるのでさえ、一人でなったと思っているぐらいだ。

「だって両親は、何もしてくれなかった」

幼少期を除き、Qはすぐに世間に注目され、お金も稼いできた。

今でも両親より遥かに稼いでいる。

そして両親は、Qをお金としか見ていない。

これは、今までの両親を見ていればわかることだ。

だから両親がいなくなっても、Qはおそらく涙も出ない。

つまり、何かを失うかもしれない…そういう恐怖をQは味わってこなかった。

悲しみや嫌悪感などは、青で表現できた。

辛い体験も青や黒で表現できた。

「この失う怖さは何色なんだろう…?」

Qは色で表せない感情に戸惑っていた。

その間にもPはQに眩しい黄色い笑顔を向ける。

QはPに聞いてみることにした。

「ねえ、恐怖って何色か知ってる?」

Pは一瞬驚き、そしてまた笑顔で答える。

「恐怖に色はないんですよ、Qさん」

「恐怖は恐怖なんです。怖いという感情は、何かを失う時以外訪れません。」

「昔の特攻隊は非難されても、なぜドローンの自爆攻撃は容認されるか…それはドローンに恐怖という感情がないからです。」

Qは黙って話を聞いていた。

「だからこそ、無=恐怖なんだと、私は思ってます。」

Pは笑顔であるが、とても真面目に話す。

そしてその目には、過去の悲しみや憂いを含んでいた。

QはPに対し、淡い透き通ったブルーな気持ちになった。

そして

「ごめんね」

と一言呟くと、Pは全てを察した顔で

「私の方こそ、すみません!Qさんじゃなかったら答えてません。」

と言った。

Qは同時に、自分がようやく人らしい感情を持てた気がした。

そして

「ねえ、P。いつもありがとう。」

そういうと、Pは

「こちらこそ」

と満面の笑みで、涙を浮かべていた。

Qはもうすぐ完成する、新AANの名前をこの時決めた。

そして明日、ようやく新AANは明日完成を迎える。

それはPも同じ気持ちだろう。

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