「まだ4時かぁ。」
mokoに色を登録し終えた後、Qは少し仕事をすることにした。
Qは今、アメリカのプリンスグラム大学と共同研究をしている。
「テロメア」に関する研究だが、これももちろん、Qの若返りのための研究だ。
Qは基本的に、自分の研究以外の仕事はしない。
企業や、他の大学からのオファーも99.9パーセントは断っている。
なんなら、「人間は1人で研究した方が効率がいい」と思っているくらいだ。
研究補助ロボットがいるので、アシスタントも不要。
3日間ぶっ通しで研究しても、ロボットなら倒れない。
そんなQが初めて共同研究を受けたとき、大学中に衝撃が走った。
びっくりして教授が飛んできたぐらいだ。
教授が来た時、Qは自分のデスクに戻り、耳栓をしてコーヒを飲んでいた。
勝手に目の前で大喜びされて、ものすごく黒くてうるさかったからだ。
研究室が黒くなるので、一刻も早く帰って欲しかった。
その時両親も飛んできたのだが、教授を見つけるとヘコヘコしていた。
本当に一番嫌いな色をしていた。
そして、2度と共同研究は受けないと誓った。
夜が空けてきて、閉まっているカーテンの隙間から朝日が差し込む。
朝日に照らされ、今は亡き祖母からもらったアメジストが光った。
祖母は、Qが10歳のときに亡くなってしまった。心筋梗塞だった。
祖母は身内で唯一の、Qの理解者だった。
Qを普通の孫、1人の人として扱ってくれる、貴重な人物だった。
アメジストが日光で虹色に光るのを見て、Qは寂しい気持ちを思い出していた。
「寂しいなんて感情、ずっと忘れてた」
何かを察知したのか、寄ってきたモコをぎゅっと抱きしめる。
祖母のような優しい色を持つ人は、他で見たことがない。
その時Qの目の前で、3色がマリアージュした。
教授の黒、アメジストの紫、祖母の優しい色。
全て合わさると、
悲しく美しくそして力強さを秘めた紫色になった。
「教授も役に立つことがあったのね」
Qはその紫色をmokoに登録した。
吸い込まれそうな紫色の空で、プラネタリウムを楽しんだ。
「あと1つ、何か足りない。」
もうすぐ全てが完成する、そんな予感がした。
つづく
ランキング参加中です
物語が気に入った方は
応援お願いします♪